2008年09月24日
ゴミ問題

環境ルネサンス 日本の自然遺産
― 屋久島のごみ処理に苦慮 ―
こけむした無数の屋久杉、縦横に走り回るヤクザル。湿気を帯びた薄暗い森を静寂が支配する。
「本当はあまり見られたくないんですが……。2200トンほどたまっています」。
屋久島(鹿児島県)の日高豊伸・屋久町環境観光課長(56)が案内してくれたのは、町のごみ焼却場跡地。幻想的な世界遺産登録地域からちょっと外れた山中の一角に、ペットボトル、発泡スチロール、ビニール袋など、大量のごみが斜面を多い尽くすほど野積みされている。
屋久島は、白神山地(青森、秋田県)とともに1993年、島の5分の1の1万ヘクタール余りが世界遺産に登録された。人口1万4000人の島を訪れる観光客は現在、年間20万人。登録前の倍近くに増え、それとともに、「山岳部付近のごみが目立つようになった」(屋久町)。
ダイオキシンの排出基準をクリアしていなかった焼却場は97年に停止、上屋久町と新しい焼却場を建てることになった。だが、その完成まで暫定的に使用された小型焼却場は紙類しか処理できず、プラスチック類は野積みされていった。
屋久町は2000年、ごみを宮崎県の処分場に運び始めた。しかし、1トン当たり約3万円の運搬費用に耐えられず、翌年、約700トンを運んだところで中断した。
新焼却場が運転を始めたのは、05年8月。だが、新しいごみの焼却が優先され、野積み分はいっこうに減らない。「ごみ処理のため、これ以上の出費はできない。観光客にもごみを出さない努力をしてもらわないと」と、日高課長は語る。
屋久島に限らず、世界遺産に登録されると、知名度が格段に上がり、旅行会社は「遺産ツアー」を組む。地元では経済的に潤う一方で、急激な俗化がもたらす問題に悩まされる。
昨日5月、屋久島の高塚岳(1396メートル)山頂近くの山小屋で、約30人が汚物150リットル分をひしゃくでポリタンクにくみ取り、4時間かけて登山口まで下る“実験”を行った。
山中の11ヶ所のトイレのうち7ヶ所がくみ取り式。周辺に汚物を埋めてきているが、限界に近づいたため、屋久町と上屋久町などが設置した協議会が対応策を検討している。
実験の結果、人力運搬は可能との結論に達したが、ここでも運搬の人件費が大きな壁に。トイレの大半を管理する県は「費用負担は難しい」と消極的だ。観光客に「協力金」を募るアイデアも浮上している。
屋久杉の森の中に散策路を設けた林野庁管理の「ヤクスギランド」などでは、維持費に充てる協力金300円を観光客から集めている。協議会の地元ガイドらは「島内の協力金を一本化して必要な所に振り分けた方がいい」と主張しているが、林野庁は「協力金制度は定着しており、場所ごとに集めて、その場所のために使うべきだ」と、応じる気配はない。
樹齢数千年に及ぶ屋久杉をはぐくんできた神秘の島で、試行錯誤が続いている。
(2007.1.19 讀賣新聞 朝刊)
ごみの問題は世界遺産のここだけではないはず。
まずは身近なところを。
そして持っていったものは必ずもって帰る。
きっと屋久島の杉たちは世界遺産なんて望んでなかったはず。
だってそれによって環境が破壊されるんだからね....